人工知能・AIがブームとなってから何年かたって、普段使っている、あるいは、身近に買える製品にもAI機能が付いてくるようになりました。
この記事では、あらためて、今回のブームの火付け役、あるいは、象徴的な事例をまとめて紹介し、今後どうなっていくかを予想する材料になることを目指します。
今回のブームは、2006年に着火→2012年頃からブームに
現在の人工知能・AIブームには、明確なスタート点があります。それは、「ディープラーニング」という手法が書かれた論文が発表されたことです。(※ジェフリー・ヒントンがScienceに寄稿した論文)
2006年にこの論文が発表され、じわじわとその影響が広がっていきました。従来は「ニューラルネットワーク」と呼ばれていた手法が30年以上前から存在したのですが、そこに「ディープラーニング」という数学を加えたことでイノベーションが起こりました。
ハードウェアの進化にぴったりマッチした数学とソフトウェア
また、ハードウェアの進化、つまり、計算がめちゃめちゃ早くなって、しかもものすごい大量のデータが扱えるようになっていたことが、「ディープラーニング」の計算手法とぴったりマッチしたのです。
それまでに出ていた「ニューラルネットワーク」の手法に比べると、前処理などのいろいろな手続きがシンプルになり、特に「画像認識」ですごい成果が出るようになりました。
そして、2012年頃から、明らかなAIブームが到来します。
AIブームの始まり事例「IBMのWatsonがクイズ王に勝つ」
2011年2月、「Jeopardy!(ジョパディ!)」というアメリカのクイズ番組で、IBMの「Watson」と名付けられたAI(※IBM社はかたくなにAIと呼びませんが周りはみなAIと呼びます(笑)が、人間のクイズ王に勝ってしまったのです。
![](https://www.ibm.com/content/dam/connectedassets-adobe-cms/worldwide-content/creative-assets/s-migr/ul/g/56/71/watsonx-timeline-build.gif/_jcr_content/renditions/cq5dam.medium.1584.1584.jpeg)
このあとも、人間の仕事を上回る、あるいは、人間の中でのチャンピオンを上回るという事例が続出するのですが、その始まりのファンファーレのような出来事でした。
ちなみに、「Watson」は、比較的手軽に利用できる学習済みのAIとして展開されており「IBM Cloud」というIBMのクラウドサービスで実際に使うことができます。無料で試用することができるので、ぜひ試してみてください。
![](https://www.ibm.com/content/dam/connectedassets-adobe-cms/worldwide-content/creative-assets/events/ul/general/08/3d/ibm_watsonx_ai_still_4k.jpg/_jcr_content/renditions/cq5dam.web.1280.1280.jpeg)
「AlphaGo」というAIが人間の囲碁チャンピオンに勝つ
「AlphaGo」という囲碁専用のAIプログラムが、何度も世界チャンピオンになっているプロの囲碁棋士と対戦して、勝ちました。2016年3月のことです。
「AlphaGo」はのちにGoogleに買収された「DeepMind」という企業が開発したAIです。
「AlphaGo」はその後どんどん進化して「AlphaZero」と名前を変え、ついには、まったく素人のAI同士が対戦しながら学習し、数時間で世界最高レベルまで到達するシステムとなります。
「AlphaGo」や「AlphaZero」はプロジェクトとして終了し、論文をもとに書かれたプログラムがオープンソース化され誰でもダウンロードして使うことができます。
※「AlphaZero」をPythonで実装した例
人間に圧倒的な勝利をおさめてしまようになったので、もはや研究対象ではなくなってしまった、ということなのでしょう。
農家が自作した「きゅうりの自動仕分けAI」
次は、雰囲気のまったく違う事例です。
AIの専門家でもなんでもない農家が、自分でAIを作り上げました。
![](https://i.ytimg.com/vi/4HCE1P-m1l8/0.jpg)
家庭菜園などできゅうりを育てるとすぐわかるのですが、普通に育てるときゅうりは曲がります。でも、スーパーで売っているきゅうりは、どれもまっすぐです。これは、出荷されるときに農家がまっすぐなものを仕分けして、あまりにも曲がったものは出荷しないからです。
その仕分けには、10種類近い規格(等級)があるそうなのですが、それは当然のように農家の方々が人力で目でみて仕分けをしていました。
この作業をAIに置き換えようとしたわけです。
「TensorFlow」:Googleが運営するオープンソースの無料AIソフト
これには、「TensorFlow」というGoogleが展開している無料・オープンソースのAIソフトウェアが使われています。
![](https://www.tensorflow.org/static/images/tf_logo_social.png)
「TensorFlow」を使って、プログラム素人だったクリーニング屋さんが自動受付AIを自作
同じ「TensorFlow」を使って、AIどころかプログラムを書いたこともなかったクリーニング屋さんが、来客を検知し、シャツやパンツなどの商品を判別して自動受付するシステムを、独学で作り上げた事例も、よく紹介されています。
スマートスピーカー(AIスピーカー)
日本国内では2017年に、「スマートスピーカー」あるいは「AIスピーカー」と呼ばれる製品が続々と発売されました。
「スマートスピーカー」とは、何かを話しかけるとその答えを音声で返してくれる製品です。前述の、クイズ王に勝った「Watson」の家庭版・部屋置き版、という感じです。
「スマートスピーカー」の仕組み
「スマートスピーカー」に話しかけた音声は、ネットをとおってサービス会社のサーバ(クラウド)に送られ、そこにいる人工知能・AIが、何を言っているかを解釈して答えを検索し送り返して、その答えを「スマートスピーカー」に発声させる、という仕組みです。
「スマートスピーカー」各社の比較
各社の製品を並べてみます。
![](https://clova.line.me/img/wave/ico_wave.png)
Clova WAVE(LINE社)
![](https://s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/e-mtb.space/wp-content/uploads/2019/04/26094636/image1.png)
Google Home
![](https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/61THuMn02BL._SL1000_.jpg)
Amazon Echo
![](https://s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/e-mtb.space/wp-content/uploads/2019/04/26100652/image5.png)
Apple HomePod(日本未発売)
(※写真イメージは、各企業のWebサイトより引用)
日本国内で一番最初に発売したのは、世界を席巻するアメリカの企業ではなく、日本では超有名な「ライン」の会社でした。
1年ほど過ぎたところで各社のシェアを比べた数字が出ています。
![](https://s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/e-mtb.space/wp-content/uploads/2019/04/26083839/image.png)
AppleとGoogleに関しては、iPhoneやAndroidの利用者数が含まれているので、「スマートスピーカー」だけのシェアと考えると、「LINE Clova」が、「GAFA」つまりアメリカの巨大企業をおさえてがんばっている状況が読み取れます。先行して発売することはこれだけ意味のあることなんですね。
まとめ
今回の人工知能・AIブームの象徴的な事例、これだけおさえておけば「とりあえずOK」、というわかりやすい事例を紹介しました。
お役に立てば幸いです。
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