マトリックス組織は、従来ピラミッド型組織の挑戦

マネジメント

今回は、IT企業、ネット企業で非常によく使われている「マトリックス組織」の概要、そのメリットとデメリット、展開された事例を紹介します。

「マトリックス組織」は、1人のヒトが2つの組織に属する

「マトリックス組織」とは、1人のヒトを2つの組織に属する形にします。

よくある事例は、

  • 1)職能別/2)プロジェクト別
  • 1)職能別/2)製品別

というパターンです。

1つ目の組織は伝統的なピラミッド

多くの場合、1つ目の組織は、伝統的なピラミッド構造になっていて、社長→取締役会→事業部長→部長→課長→平社員、といったごく普通の会社組織のイメージです。

職能別にするとお互いに理解がしやすいので、それぞれの上司が部下の仕事を把握をしやすくなり、人事評価・成績評価をされても公平な感じが出ます。

伝統的なピラミッド構造組織のデメリットは、いわゆる縦割りの組織になり官僚化して自分たちを守る力が強くなりすぎ、硬直化してイノベーションが起きにくくなることです。

2つ目の組織は、組織横断の横ぐし組織

これに対して、2つ目の組織は、「横串(よこぐし)の組織」とよく呼ばれます。

つまり、ピラミッド構造の縦割り組織に対して、組織を横断して、横方向に人員を引き抜いていく感じでチームを作ります。

縦割り組織が恒常的に全員がもれなくどこかに所属することに対して、2番めの横串組織は、一時的なものであり、人員は増えたり減ったりすることを前提としています。横串組織の出入りを比較的自由に柔軟にすることで、その組織の使命であるプロジェクトやプロダクト(製品)の機動性が高まり、生産性が向上することを狙っています。

実際の業務は、基本的に「横串組織」のほうで動きます。

横串組織にもリーダーがいますが、比較的フラットな構造になり、職能の異なる人たちが力を合わせてミッションを達成する、という感じになって、よりクリエイティブ、イノベーティブになることも期待できます。

これが「マトリックス組織」つまり、横串組織を加えることの大きなメリットです。

「横串組織」が明確にされていない組織もよくあります。実際の仕事は、職能別の縦割り組織を横断しながら動いていき、運営されている組織は数多くあり、おそらく増えていくと予想します。なぜなら、1つの職能、1種類の職人だけでは完結しないプロジェクトや製品が普通となったことに加えて、縦割りの業務分担がかたまる前に仕事が変わっていってしまう時代になったからです。

大企業でも、横ぐし組織

大企業では、工程が進むほど横串組織の人数が増えていく傾向にあります。

たとえば、新しいインターネットのサービスを立ち上げることをイメージしてみます。

最初は、マーケティングや調査をして企画を起こすところから始まりますので、1~2名で足りることも多いでしょう。サービスの概要やおカネの流れなどができてきたら、次にサービスの核になるプロダクトの設計に入ります。

ウォーターフォール型かアジャイル型かで、時間・人員の割り当て方が変わってきますが、画面表示を設計・デザインしたり、その向こう側で動くプログラムやシステムを設計したりします。

次に、設計したものを実際に制作・開発します。ほとんどの現場では、設計するよりも人員が多く必要でしょう。

できあがったら、プロダクトを世に出す、つまり、リリース・ローンチして、運営します。システムの運営し、おカネの流れを管理しながら、ユーザーの反応を確認してサービスを修正、調整していきます。

サービスを世に出したあとの仕事は、作る前、あるいは作っている間の仕事とは性質が違い、かかる手間も変化するので、さらに多様な人員が多く必要です。

日産・ゴーンの「クロス・ファンクショナル・チーム」

厳密にはマトリックス組織と言えないかもしれませんが、カルロス・ゴーン氏が日産自動車をV字回復に導くときに「クロス・ファンクショナル・チーム」という組織を作って、有名になりました。

これは本質的にはマトリックス組織で、横串で各部門から精鋭を引き抜き、課題を解決させたのです。

日産自動車のような大きな組織には優秀な人材が豊富にいて、課題の解決方法を知っているヒトもたくさんいることが多いのです。ただ、伝統的な組織の構造などに勝てず埋もれているので、それならある程度足かせを外して自由にしてあげれば、解決できるでしょう、というヨミだったわけです。

これは大成功しました。一時的、テンポラリで、かつ、フラットな組織、ということがその要点であると思います。

「マトリックス組織」のデメリットは、2人のボスに仕えること

「マトリックス組織」には、デメリットもあります。

一番大きなデメリットは、1人の社員が2人の上司に仕えることになる点です。これは、一般的にはタブーとされています。

タブーとなる理由はカンタンで、ボスが2人いて言うことが違っていたら、どちらの言うことを聞いたらいいかわからなくなるからです。

たとえば、部長が課長を飛び越えて平社員にいろいろ言うとピラミッド型の組織運営がうまくいかなくなります。これは、縦割り組織と横串組織の双方の上司がうまく役割を分けて柔軟に対応することが望まれます。この役割分担があまりにはっきりしてしまってもメンバーが板挟みになったりしますので、この調整がマトリックス組織運営の1つのキモになります。

「マトリックス組織」がむかない組織もある

わざわざマトリックス組織を作るまでもない組織も当然あります。たとえば、ある程度決められた商品や、パッケージ化されたサービスを販売する営業組織の場合、ピラミッド構造組織のみで効率よく運営していけます。

十分にパッケージ化されている場合、他の組織と連携する窓口、インタフェースが十分標準化されていて、決められたとおりにコミュニケーションすればうまく仕事が流れます。

また、管理部門、たとえば、人事、総務や経理なども、マトリックス組織は不要でしょう。このような部門では、社内に対しても情報セキュリティ、情報がもれていかない管理が必要で、マトリックス組織のような形態はこの面でもスキが出ます。

まとめ

「マトリックス組織」について、その考え方、メリット、デメリットを紹介しました。

お役に立てば幸いです。

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