「D2C:Direct To Consumer」をテーマに、今回は事例を多く取り上げながら、その本質やマーケティングの特徴に迫ります。
今回注目したいのは、「一品勝負」「一点突破」、つまり、「ニッチを突き抜けてブレイク」する作戦です。「D2C」のさまざまな事例をみながら、その戦略を見抜いていきましょう。
「D2C」の概要を解説した前回記事はこちらです:
事例)Allbirds /D2C代表事例
「D2C」の大成功事例として、いろいろな記事にも取り上げられている企業が「Allbirds」です。
![](https://www.goldwin.co.jp/static/full/images/store/ogp/allbirds/ogp.png)
わかりやすいように日本語のページをリンクしますが、アメリカ発です。
このような非常にシンプルなスニーカーの一品勝負でブレイクしました。
![](https://s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/e-mtb.space/wp-content/uploads/2022/01/30164022/allbirds_screenshot.png)
特徴は、メーカーやブランドのロゴがないことです。
スニーカーは普通、メーカーやブランドのロゴマークが大きくデザインされています。「このマーク、無くていいんじゃない?」というのが既存メーカーに対するカウンターパンチの一つです。
靴として品質がよいこと、シンプルなデザインながらロゴがないなどの特徴があり、さらにいわゆる環境にやさしい素材を使うなどで、アメリカ西海岸・シリコンバレーの起業家たちの間で大流行します。
ブレイクしたあと、アパレル全体へ商品のラインナップを増やし、販路も増えていきます。
2020年1月には、東京・原宿にリアル店舗を出店しました。
事例)atoms /「ぴったり合う」の一点突破
もう一つ、靴・スニーカー事例として「atoms」を取り上げます。
![](https://cdn.shopify.com/s/files/1/0231/2060/9358/files/assets_a12f8232201349c391f4feed87a4d995_dca94cf7bc2a491a803bd2e8335ccae1_20_282_29.jpg?v=1721088055)
![](https://s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/e-mtb.space/wp-content/uploads/2022/01/30164205/black_above-1024x535.png)
前述の「Allbirds」に似たスタイルの靴ですが、「atoms」の突き抜けポイントは「ぴったり合うサイズの靴」でした。
「クォーター(0.25インチ)刻み」のサイズ展開をしています。
日本の感覚で言うと、0.25cm刻みでサイズがある感じでしょうか。つまり、普通の靴のサイズよりも間にさらに1段階入るイメージです。
そして、購入時にはその上下一つずつのサイズを含めた3足が送られてきて、一番合うものを選んでもらい残りの2つを返送してもらうスタイルをとりました。
この「1足の注文に3足送ってしまう」という手法は、アパレル系ECが勃興する時代に「Zappos(ザッポス)」という企業がやり始めて話題になりました。
「atoms」は、当初白と黒しかありませんでしたが、事業の発展に伴い、カラーバリエーションが増えています。
事例)Pair Eyewear /着せ替えで一点突破
次に紹介する「ニッチの一点突破」は、着せ替えできるメガネです。
![](https://paireyewear.com/pair-logo.png)
ベースフレームを買って、トップフレーム(前側)を着せ替え用として追加で買います。
ベースフレームが$60、トップフレームが$30ぐらいで、当初は子供向けが押し出されていましたが、現在はすべての年代に向けて販売しているようです。
トップフレームはマグネットでくっつく形で、カンタンに付け替えられるのがポイントです。映画やアニメ作品、スポーツ選手などとのタイアップで、付け替える側のトップフレームをどんどん追加購入してもらうことを目指しているようです。
事例)cloud paper /竹でできたトイレットペーパー
「D2C」企業が顧客に訴求するポイントで、一番よく出てくるのが「環境にやさしい」ことです。
「cloud paper」は、紙なのに木材を使わず、100%竹でつくるソフトなトイレットペーパーを提供します。
![](https://cdn.shopify.com/s/files/1/0154/2612/5888/files/CP-Social-Card_4c14245c-6d94-40e3-93fd-c3b994aac70a.jpg?v=1624563949)
この事業のもう一つの特徴は、「サブスクリプション」です。
つまり、あらかじめ定額料金を支払っておくと、注文された頻度で送ってくれます。
一定の契約期間を持たせて前払いさせることで、企業側は一定期間先までの収入を予測でき、事業として安定します。
ユーザーのほうは買いに行くわずらわしさなく、申込んだらあとはほっておけば、勝手に送られてくる、というわけです。
新型コロナウィルスの流行で、ユーザー数は6倍に成長したそうです。
![](https://scrum.vc/ja/wp-content/uploads/2020/05/Lime-700x472.png)
事例)和もん /和風のピクルス
最後に紹介するのは、日本発、国内からの食品事例です。
「和もん」というブランドで、和風のピクルスという和洋折衷的な漬物での一点突破です。
食品のなかでもニッチな「漬物」というカテゴリーで突き抜けようとしたのが斬新でしたが、注目したいのはその立ち上がり方です。
現在は、前述のようなWebサイトがありますが、「あの」Techcrunchに取り上げられた当初、Webサイトはありませんでした。
![](https://techcrunch.com/wp-content/uploads/2018/04/tc-logo-2018-square-reverse2x.png)
そのときあったのは、クラウドファンディング・サービス「Makuake」のページと、「note」というサービスのブログだけでした。
![](https://static.makuake.com/upload/project/9527/main_9527.jpg?version=1590026408&width=690&height=388)
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/92156382/profile_62d61fdc4ec1528f05e4503b9ad4032a.jpeg?fit=bounds&format=jpeg&quality=85&width=330)
大量のフォロワーがいるSNSアカウントがあったわけでもなく、りっぱなブランドWebサイトやECサイトがあったわけでもなく、クラファンとnoteだけの状態から始まる成功事例は、あとに続く起業家たちが参考にすべきでしょう。
まとめ
「D2C」の本質にせまるべく、「一品勝負」「一点突破」での成功事例を紹介しました。
いわゆる「弱者の兵法」のセオリーどおりに戦っている事例とも言えます。
お役に立てば幸いです。
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