日本で株式会社をつくるときに決めなきゃいけないこと3選

マネジメント

2人~3人のチームが創業して株式会社を登記するときに、決めなければならないことを順にピックアップします。このブログの主たるテーマである学生の起業をイメージしていますが、ネットやスマホを使った多くのスタートアップ企業にもあてはまる内容です。

この種の情報は非常に多く、しかも言っていることがちょっとずつ違います。これは株式会社をつくるとき(=会社を登記するとき)にやることが、ケースバイケースで変わってくることを意味しています。

そこで、この記事では、あえてすべてを網羅しようとせず、重要なポイントだけをピックアップして紹介します。

「定款」が会社=法人の正体

株式会社に限らず、日本で会社を作るときには「定款」を作ってこれを役所に登録、つまり「登記」します。

つまり、「定款」の内容が定まれば、あとは役所が求める手続きをするだけです。

「定款」のテンプレート・ひな形は、ネットに山ほどあるので、検索して自分たちにマッチしそうなものをつかえばよいのですが、その中で各自が考えるべきことを順に紹介します。

1)目的

まずは「目的」です。この会社は何をするのかを決めます。

チームで創業するなら、「目的」はできるだけ絞り込む

個人で起業する場合なら「やりそうなことはとにかく全部書いておけ!」というアドバイスも成り立ちます。(登記したあとの変更手続きには、おカネと手間がかかるためです。)

しかし、チームで創業する場合は、できるだけ絞り込むことをオススメします。

あらためて会社の理念を話し合い、その理念の具体的な展開例としてやりたいことを書き出し、合意しましょう。

「なんでもかんでも書かないで絞り込む」ことをオススメする理由は、起業の初期段階では、超ニッチに絞り込んだほうが成功する確率が高まるからです。

チームでなく1人なら「書いてはおくけどいまはコレ1点集中!」が抵抗なくできます。しかし、おカネのからんだ事業では、たとえ超仲良しの友人であったとしても、その集中度合いを常に把握しお互いに制御して、常に足並みを合わせていくのは非常に難しいです。

ですので、「法人の登記」というオフィシャルなところまで統一的にかためておくと、チームメンバーのベクトルがそろって突き抜けるパワーが出てきます。言い換えると、「これでチームの足並みがそろうならコスパ高」ということです。

書き出した目的を、定款向けのテキストに変更

定款の目的の文章の例も、テンプレと同じぐらい山のように検索で出てきますので、文例に困ることはあまりないと思います。

「これをやろう」という目的のリストを、定款の目的風の文章に変換してください。

また、目的の最後には「前号に付帯関連する⼀切の業務」などと入れるのが一般的です。これによって、関連する活動と言えればだいたい何でも網羅されるというベンリな(?)文言です。

最終的には、行政書士などプロにチェックをしてもらうのがオススメです。

2)持ち株比率

一番悩むのはこの「持ち株比率」でしょう。これに伴って、株価をいくらにしたらいいのかが、さっぱりわからないのが普通です。

これもまたケースバイケースで、ネットを検索しても自分たちにぴったりマッチしそうな答えはなかなか見つからないものです(よって、コンサルタントや士業が成り立つわけです(笑)

オススメしないのは「均等割り」

いろいろなヒトが共通してオススメしていないのが「均等割り」、つまり、持ち株比率を創業者全員同じにすることです。

この理由を短くまとめると「未来に対する意思決定において、メンバー全員の意見がいつも合うわけではない。」ということでしょう。

事業においては、引くか引かないかの意思決定、攻めるか守るかの判断が常に行われます。その時点において限られた時間内に判断をしますので、考えを合わせきれないこともありえます。たとえば、いくら学生時代の仲間で気心が知れているという状況であっても、能力と判断力はバラバラです。未来の見通しができたりできなかったり、当たりハズレもあります。

意見が割れたそのときに「最終的に誰の判断を優先するのか」を事前に決めておくべきだ、というのがこの「均等割りはやめておけ」というアドバイスにつながっています。

過去の実績ではなく、未来に対するコミットの量で、持ち株比率を決める

これもいろいろなところで言われています。

たとえば、このブログでアクセスの多いテーマである「起業の科学」の続編:「起業大全」でもこのような記述があります。

株は過去の努力ではなく、将来の努力に基づいて分配されるべきだ
ーーーマイケル・シーベル Y Combinator

「起業大全」338ページより引用

「いままでこれぐらいやってくれたから」という理由で比率を決めるのは、少なくとも創業時においては正しい判断方法ではない、ということです。

「報奨金の代わりに株が渡される」という考え方が比較的ポピュラーなので勘違いしがちですが、創業者は自分自身が株を渡す側だということを再認識してください。

株価と出資金を決める

出資金を株数で割ると、株価が出ます。

出資金は、基本的に返ってこない(会社が終わらない限り)ので、自分のいま持っているおカネを考えれば、出せる金額はだいたい決まってくると思います。

株数は、1万株以上

これもスタートアップ関連でよく勧められていることです。たとえば、先に紹介した「起業大全」にはこのような記述があります。

登記の際に、最低でも1万株~10万株は発行する。

「起業大全」342ページより引用

これは、エンジェル投資家やVC(ベンチャーキャピタル)の投資を受け入れることを想定して、投資を受け入れたあとの持ち株比率調整を、手続き上スムーズにするためです。

とはいえ、株はあとから分割可能なので、実現したい出資比率に合わせられなくなるということもあまりありません。

株価は「1円」とか「10円」でよい!?

あとは、持ち株比率が実現できて、各人が出せる金額に収まるように株価を設定します。

たとえば、「1株10円」とすると、

  • Aさん:8,000株=8万円
  • Bさん:1,000株=1万円
  • Cさん:1,000株=1万円

というように分ければ、「8:1:1」という持ち株比率が実現して、出資金は10万円です。

株価って、そんな安くていいの?

昔は株式会社をつくるのに1千万円の出資額が必要だったため、万円単位、十万円単位の株価をイメージしている人も多いのですが、1円でも大丈夫です。

たとえば、いま大成功して有名な会社となった「メルカリ」の事例をみてみますと:

メルカリの株価の上場前の変遷は、2回の株式分割をへて
10円→20円→90円→220円→1090円→2150円→初日終値5300円
530倍のリターン。

「スタートアップ投資ガイドブック」75ページより引用

最初は10円だったそうです。

もしメルカリと同じように530倍になるとすると、上述の例で創業者が出資した8万円は「4,240万円」の価値になり、実際は株式分割していますからさらにこの額の何倍かになるはずです。この倍率(マルチプルの世界)が事業を興す醍醐味です。

株価を途中で下げるとややこしい

逆に、株価を途中で下げたりすると、その前に出資した人の価値が下がって非常にややこしいことになるので、そういうことをしないようにするためにも(?)、最初の株価は安くてかまいません。

3)会社名を決める

会社名は、大きな志にぴったりの理念を体現した名前・・・ではなく、直近の事業に合わせた・身の丈に合わせた名前にするのがオススメです。

たとえば、当初に行うサービスのサービス名をそのまま会社名にしてしまうのは、よくある事例です。

これも、創業者含めた社内メンバーの向かう方向性をしっかりと絞り込むことに使いましょう。

そして、サービス名や会社名の付け方のトレンドは、

  • 「ものすごくベタベタ」
  • 「聞いたら何をするのかすぐわかる」

というネーミングです。サービス名や会社名は、お客様とコミュニケーションする重要なルート・手段であることが浸透しているのでしょう。

番外)登記する場所

いったん登記した内容に変更がある場合、その手続きにはおカネがかかります。たいていが万円単位で、手続きのたびに、3万、5万と飛んでいきます。創業時のおカネのないときにこういう出費は痛手でしかないので、できる限り登記変更しないようにしたほうがよいです。

しかし、「法人登記あるある」なのが、この登記した住所の変更です。初期の小さなスタートアップを想定すれば、実質的には「本店移転」です。個人の住民票移動は無料ですが、法人の引越しにはおカネがかかります。

この本店移転手続きをできるだけ行わないようにするためには、当初に結構慎重に選んでおく必要があります。

特に、最初から事務所をかまえてやるわけではないが法人登記はする、という場合、登記する場所をどこにするべきかは意外と悩ましい問題です。カンタンに論点をピックアップしますと:

  • 自分が住んでいる賃貸マンション・アパート
    • 多くの場合、事務所利用は契約で禁じられているので、バレてしまったら(笑)移転しなければなりません。
  • 自分が買って住んでいるマンション・持ち家
    • 一番問題が出ないパターンです。同居人と合意しておけば大丈夫でしょう。
  • バーチャルオフィスを契約
    • おカネはかかりますが、私が確認した範囲では、東京都港区で月1,500円のサービスがありました。また、住所が他社と共用なので検索されるとバレてカッコ悪い、銀行口座を開くときに手間が増えることがある、など多少のデメリットはあります。このあたりを割り切って、多少のおカネを払って本店移転問題を片づけてしまうのは、オススメできる策です。

登記手続きを、プロに頼むべきか

株式会社の登記手続きには、自分で全部やったとしても25万円ぐらいかかります。

「これをプロに頼んだらもっと出費がかさむ・・・」と考えると自分でやりたくなるのが人情ですが、プロに頼むのもよい手だと思います。

信頼できて仕事の速い行政書士さんなど士業のパートナーは、会社を運営していく上で必要です。

どうしても節約したい場合、書類をそろえたりチェックしたりするところだけプロに頼んで、公証役場や法務局に行って手続きするところを自分でやると、比較的スムーズです。(私もこの方法で登記したことがあります(笑)

注)法人をつくると毎年おカネがかかります!

いったん法人を作ってしまうと、どんなに赤字であっても毎年7万円の税金支払いが必要です。

赤字であることを示すには、決算を行って申告をしなければなりません。私がすべて自分で実体験した経験から言っても、プロに頼むのがよいです。すると、そのプロ(税理士や会計士)への支払いもかさみます。

もしメンバーに報酬を払えば、社会保険などの手続きも発生します。これもまぁまぁややこしい上に、毎年金額が上がったりなど制度が変わっていきます。これについていくのは、人事労務の素人には現実無理です。

よって、「freee」や「SmartHR」など、士業の代わりにこの部分を請け負ってくれるクラウドサービスがものすごく伸びたわけです。

その他の情報

法人登記についてはいろいろな情報があふれていますので、いろいろなページに目を通して、事前に知識を入れておくのがスムーズに進めるコツです。シンプルにまとまっているなーと思ったページを1件だけ紹介します。

会社設立の流れと準備しておくべき10項目 | 経営支援ガイド
スタートアップや週末起業という言葉が頻繁に使われるようになった昨今、「自分も将来は会社を…」と考えている方は多いのではないでしょうか。 実際に会社の設立する時には、資本金や設立費用の他にも用意しておくべきものがあります。

まとめ

2人~3人の創業者チーム、小さなスタートアップが日本で法人登記するときのコツ・考えるべきポイントをまとめました。

前述したとおり、伝統的な士業に依頼するほかに、クラウドサービスを利用する手段も一般的になってきましたが、ここで取り上げた内容はどういうルートをとるとしても解決しなければなりません。

お役に立てば幸いです。

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