並製本でありがとう! 中身もブ厚すぎる森岡毅の新作本「マーケティングとは『組織革命』である。」を読む。

ストーリー

並製本が大好きだ。

厚めの紙で表紙から裏表紙までグルっと折り込んでボンドで綴じられている。表紙と中身の大きさはピッタリ同じで、上からの見た目がスッキリしている。新書や文庫本はほぼすべて並製本だが、私が好きな大きさはビジネス書サイズのB5だ。本を少し折り曲げて開いたとき、手にピッタリとフィットする。

ハードカバーも悪くはない。
ガッチリとしていて折り曲げようがなく、表紙と裏表紙の綴じたところがへこんでいる。私は読み始めるときに、カバーをすべてはずしてあのへこんでいるところをきゅーっと押し込むようにこすり、机にぺったりと置いて開くようにする。あのこするときの、ペリペリと紙がへこんで内側にあるノリにくっつくような、あの感覚がたまらなく好きだ。並製本にはその醍醐味はない。

並製本を開くときには、カバーはすべてはずして、表表紙の厚紙を慎重に折り曲げる作業から入る。折り目が最初からついている本はあまり悩む必要がないが、折り目がついていない本は、どのあたりで折り曲げると気持ちがいいのか、おそろしく悩む。でもあまり時間をかけずに思い切って、エイッと折り曲げる。まっすぐに気持ちよく開く位置で折り曲げられたときには、とても気持ちがよい。

そして、パラパラと開く感じがとてもよい。並製本は開く面がまっすぐになっている。ハードカバーは開いた状態のバランスを考えて閉じたときにはへこんだカーブがついている。親指でパラパラとめくる感覚は、ハードカバーではなく並製本で味わえる。

さらに、ハードカバーはその形から保存されることを要求しているようにみえる。本が長持ちするようにハードなカバーとなっているとしか思えない。それに比べると並製本は、使ってくれと言わんばかりだ。どう見ても、書いてくれ折り曲げてくれいいんだやってくれ、と言われている。

私は、赤線を引いたりペンで書き込んだり、さらに重要なことはページのカドを折り曲げたりする。さらに発表や原稿などに使う場合には、付箋を追加する。ハードカバーの本では少しだけ後ろめたさを感じながら、保存なんてひとかけらも考えていなくてごめんなさい、という気持ちをどこかに持ちながら、その作業をしなければならないが、並製本なら大丈夫だ。

そんな親しみやすくて大好きな並製本で、ブ厚すぎる本が出た。大阪のUSJをV字回復させてアジアの観光スポットにまで飛躍させた森岡毅氏の新作「マーケティングとは『組織革命』である。」だ。

ページ数が多いだけでなく、中身が本当にブ厚い。これは少なく見積もっても3冊に分けてよいブ厚さだと思う。

1冊目は、組織をつくる経営書である。
その大きな特徴は、マーケティング部門が商品開発(R&D部門)をリードする形態をとることで、理にかなっている。というより、理詰めでロジックで納得させられてしまうから、とりあえず頭ではわかった状態になることは間違いない。すばらしい経営書に共通しているのは、話しはシンプルでわかるけど、実際にやりきるのはまた別問題だ、ということだ。それをくつがえすように2冊めが登場する。

2冊目は、下の立場から組織を変える方法だ。
「自己保存」というキーワードで人間関係をマーケティングする。ご本人が実際に乗り越えてきたどうしようもない組織や上司、同僚たちを批判しすぎることなく、頭一つ抜けた雲の上から眺めるような優しい目線で、その言動と行動をズバズバと切る。これは実際に使えるかどうかという以前に、組織の壁にもんもんとしている平社員を、元気にさせる力がある。いわゆる「光明思想」に近いところまで行っているのだ。読んでいると元気が出てしまう記事である。

なのにまだ3冊目がある。
3冊目は、各界のレジェンドたちのインタビュー記事だ。セブンイレブンの鈴木敏文、AKBの秋元康、湖池屋の佐藤章、アートディレクターの佐藤可士和って、どんだけなんですか、と言いたい。短く要約されてしまっているが、普通に書き起こせば1冊になるのが透けて見える。

新卒サラリーマンの頃、私はやる気満々でモチベーション高くはたらく人の気持ちがわからなかった。当時森岡毅氏のようなヒトがもし職場にいたら、まったく理解不可能な生き物に見えていたに違いない。なぜかそのときのことを思い出して、いまははっきりと理解できる自分、ちょっとぐらいは成長した自分をほめてもいいのではないかと思い始めている。


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